
腎臓はわたしたちが生きていくうえで必要不可欠な臓器です。
日本の慢性腎臓病罹患率は成人全体で5人に1人ですが、80歳台では2人に1人と高齢になるに従って高くなります。慢性腎臓病では蛋白尿が多い程、あるいは糸球体濾過量が低い程、透析を要する「末期腎不全」や死亡や生活の質の低下に関連する「心血管イベント」の「リスク」が上昇することが知られています。
慢性腎臓病(CKD)は生活習慣と強く関連しています。生活習慣病は、心臓病・脳血管障害(脳卒中)・足壊疽などの全身の血管に関連する病気(心血管病)に深く関与しており、腎臓は非常に血管に富んでいるため、動脈硬化の影響をモロに受けてしまいます。慢性腎臓病(CKD)発症進展予防には食事管理(減塩・適正なエネルギー摂取量とバランス)、適度な運動、禁煙といった生活習慣の是正が大切で、これらは全身の血管の動脈硬化を予防することと同義です。

腎機能が低下していっても腎代替療法が必要になる直前まで自覚症状がないことも珍しくありません。一般的に腎機能が低下したときに出る症状と言われる、むくみや倦怠感を自覚したり、血圧のコントロールが悪化するのは腎機能が正常の30%未満となってからのことが多い一方で、検査数値は自覚症状がでるずっと前から正常値から外れています。健康診断を定期的に受けてご自身の状態を把握しましょう。生活習慣病以外の腎機能が低下する原因も隠れていることがあり、健康診断を定期的に受けることは、その早期発見にもつながります。
腎機能はGFRを用いて評価します。GFRは血液検査の結果では血清Cr値・性別・年齢から日本人のGFR推算式を用いて算出できるので、健康診断などで血液検査を受けた際には確認してみてください。
慢性腎臓病(CKD)の定義
「腎臓の障害」もしくは「腎機能低下」が3か月以上持続している状態の総称です。 「腎臓の障害」とは「蛋白尿」や「腎形態異常」を指し、「腎機能低下」とは「糸球体濾過量 60ml/min/1.73㎡未満」を指します。
腎臓が担っている主な仕事
- 〇老廃物の排泄・再吸収
- 〇身体に必要な水分や塩分の微調整
- 〇血圧の調節
- 〇骨髄に造血の指示を出す
- 〇ビタミンDを活性化し骨にカルシウムを沈着させる
主な原因と増悪因子
- 〇糖尿病
- 〇高血圧
- 〇高尿酸血症
- 〇脂質異常症
- 〇肥満
- 〇喫煙習慣
- 〇過剰飲酒習慣
- 〇加齢
参考資料
一般社団法人日本腎臓学会ホームページ
エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023 / 編集 日本腎臓学会
腎臓内科 医師 梶原 麻実子